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- 山本康生
家と庭と町の境界をとりはらうと、暮らしはもっと楽しくなる

今まで家を建てた人の多くは、決して大満足はしないけれど、雨が漏らないで最低限の生活ができるから良いといった、なんとも日本的な住宅事情の延長にいたように思います。 その土地の魅力を引き出す工夫やデザイン、さらに暮らし方を重視した生活提案は、そこに住む人たちの暮らしの質をも変えてしまう重要な要素です。しかし、ほとんどの人たちが、その可能性に気づかず、あきらめているのが、これまでの日本の住宅の実情ではないでしょうか。 私は、庭と建物の関係を強めたり、外と内の暮らしをつなげる工夫をしたりすることこそが、そこに住む人たちのこだわりとその土地に住む意味を再認識することにつながっていくことだと感じています。 暮らしはもっと楽しいものではないでしょうか。
私は、かつて、海外生活を経験した後に、環境を中心とした緑の景観づくりをテーマに、テーマパークやイベント施設などのデザインの仕事をしていました。あるとき、住宅メーカーから住宅の外構デザインの仕事の依頼を受けて完成させたところ、大変驚かれたのをよく覚えています。その理由は、誰もが、庭園と、門や塀などの外構は別物だと考えていた時代に、アプローチなどの機能エリアに緑を多用して、庭を越境させていったことにありました。なにしろ、当時はクステリアといえば、ブロック塀や金物の扉、そして駐車場やタイルのアプローチ、残りは土のまま、そんな味気のない機能性だけのものばかりでしたから。 私は、それ以来十数年間、住宅のエクステリアと庭の仕事を中心に行うようになり、エクステリアが住生活を豊かにするさまざまな可能性を探ってきました。物語性のあるアプローチ、季節感のある庭、そして美しさを感じられるデザインを追及してきました。 しかし、建築のデザインが終わってから外回りのデザインを考えるのでは、その土地が持っている魅力を生活の豊かさにつなげることに限界があります。それは、敷地の余ったところだけで工夫するしかないからです。また、一軒の家でいくら街への配慮をしても、周辺の家が街づくりを意識していないと、決してきれいな街並みにはならないことにも、気づきました。 そこで、現在では、個人邸のエクステリアデザインに加えて、建築デザイナーとコラボレーションして、分譲住宅の初期の配棟計画や環境デザインを提案する仕事や、生活シーンを一変させてしまうような住宅リフォームにも取り組んでいます。 これからも、ワクワク・ドキドキするようなものづくりを目指してり、様々なデザインの可能性にチャンレンジしていきたいと考えています。

小樽生まれの東京育ち、獨協大学外国語学部中退。
建築家故吉村順三氏が認めた昭和の巨匠、造園家の後藤由松氏に師事し、10年ほど学んだ。その後、株式会社パルグリーンを設立し、情緒のある作品作りで、様々なプロジェクトや住宅建設に携わっている。
主な実績に、大阪花と緑の博覧会三井東芝館外部デザイン、スペースワールド花計画、奈良新七草のある街、埼玉リフレの街、八王子小町など
